紀伊山地の霊場と参詣道とは
2004年7月に中国・蘇州で開かれた第28回世界遺産委員会で世界文化遺産に登録された紀伊山地全体に広がる霊場とその参詣道全体です。和歌山県を中心に、三重県、奈良県も登録範囲に含まれます。
文化的景観が評価されている
世界遺産の登録要件のうち、ⅱ、ⅲ、ⅳ、ⅵを満たしています。
熊野古道などを歩いてみると実感しますが、古来より山や森、川、巨岩などが神仏の宿る場所と信仰し、お参りをするために道を切り拓いて形作られた景観が広がっています。
紀伊山地の自然がなければ生まれなかった霊場とその参詣道、それらを成立させる文化的景観が高く評価された世界遺産であり、世界を見ても非常に珍しい価値を持っています。
登録資産と関連文化財
登録資産はエリアとそれらを繋ぐ道の4つに分けられます。
- 吉野・大峯
- 熊野三山
- 高野山
- 参詣道
それぞれ広大なエリアとなっており、京都をはじめとする全国の人々の精神的・文化的な発展と交流に重要な役割を果たしてきました。
吉野・大峯エリア
吉野・大峯エリアは「修験道」という日本古来の山岳信仰を代表する霊場として知られています。
修験道とは、山に籠って厳しい修行をすることで悟りを得ることを目的とした信仰で、その実践者を「修験者」や「山伏」と呼びます。吉野・大峯エリアの登録資産は下記です。
- 吉野山
- 吉野水分神社
- 金峯神社
- 金峯山寺
- 吉水神社
- 大峰山寺
熊野三山エリア
熊野三山エリアは、熊野信仰と呼ばれ古来から篤く信仰されてきた聖域です。「伊勢へ七度、熊野へ三度」と言われるように、詣でに行くことが多くの人の憧れとされていた時代があります。
熊野信仰に身分や階級の差はなく、誰もが険しい山道を歩いて熊野詣をしたとされます。熊野三山エリアの登録資産は下記です。
- 熊野本宮大社
- 熊野速玉大社
- 熊野那智大社
- 青岸渡寺
- 那智大滝
- 那智原始林
- 補陀洛山寺
高野山エリア
高野山エリアは真言密教の聖地とされており、今日でもその教えと伝統を守っているエリアです。高野山真言宗は、弘法大師空海が平安時代初期に大成した真言密教の教えを教義とする真言宗の1つの宗派です。高野山エリアの登録資産は下記です。
- 丹生都比売神社
- 金剛峯寺
- 慈尊院
- 丹生官省符神社
参詣道
参詣道は、上記の3つのエリアを結び、人々を信仰心の拠り所へと導く精神的・文化的に重要な役割を果たしました。紀伊山地の豊かな自然に心を洗われ、時に険しい道を行くことで心身を鍛え、そういった自然との接触も含めた「修行」を行うことが当時の人々の篤い信仰心にも繋がっていたのです。主な参詣道は下記です。
- 熊野参詣道
- 中辺路
- 小辺路
- 大辺路
- 伊勢路
- 高野参詣道
- 町石道
- 三谷坂
- 京大坂道不動坂
- 黒河道
- 女人道
サンティアゴ・デ・コンポステーラに次ぐ「道の世界遺産」
道の世界遺産として有名なのが、スペインにある「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」です。1998年には「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」として、フランスの各都市の歴史的建造物群や巡礼路も別件で登録されました。
紀伊山地の霊場と参詣道とサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路は、日本とヨーロッパという遠く離れた地域において、人々の信仰心によって築かれた文化的景観に共通点が多く存在します。そのため、熊野古道のある和歌山県田辺市とサンティアゴ・デ・コンポステーラ市は観光交流協定を締結し、両方の道を巡礼した人に対して共通巡礼手帳を発行するなどして観光都市を盛り上げる動きを見せています。
